最近のDCコミックスは言うと、昨年より連載されていた『ダークナイツ メタル』シリーズが完結し、これまでリランチ後に登場していなかった多くのキャラクターが復活するとともに一気にユニバースの奥行きが広がり、世界観はますます壮大に。
ウォッチメンの続編と言ってもいいであろう『ドゥームズデイ・クロック』も大好評で連載が続いています。
ウォッチメンの続編と言ってもいいであろう『ドゥームズデイ・クロック』も大好評で連載が続いています。
また、個人誌に目を向けてみると、以前当ブログでも取り上げたバットマンとキャットウーマンの結婚がいよいよ大詰めに。今月5月2日に発売された『DC NATION #0』を皮切りに、結婚式へのカウントダウンが始まっていきます。しかしそれと同時にジョーカーによる結婚式妨害が予告されており、今後の行方に目が離せない展開となっています。
さらに、ジャスティス・リーグ関連では、メタルの連載終了と共に同じくスコット・スナイダーがライターを務める新ストーリー『ノージャスティス』の開幕が控えています。
これに伴い現在のジャスティス・リーグ、ティーン・タイタンズ、タイタンズはそれぞれリニューアルし、新たなるメンバーで再編されることが予告されています。
これに伴い現在のジャスティス・リーグ、ティーン・タイタンズ、タイタンズはそれぞれリニューアルし、新たなるメンバーで再編されることが予告されています。
特にジャスティス・リーグ誌はスコット・スナイダーがライターを務めると共に、新メンバーとして、グリーンランタンであるジョン・スチュアートとホークガール、そしてマーシャン・マンハンターが参加。新たな物語が展開されていきます。
- おや、と思われた方も多いことでしょう。そう、このチーム編成、言わずと知れた『ジャスティス・リーグ アニメイテッド・シリーズ』のメンバー構成なのです! 僕を含めたアニメイテッド・シリーズファンには涙腺崩壊案件のこの新ジャスティス・リーグ、チェックせずにはいられないといったところでしょうか。
そして何よりも超ビッグなのはスーパーマン関連のニュース。
今年はスーパーマンが1938年に『アクションコミックス #1』にて初登場してから記念すべき80周年の年。
そしてそれと同時に、4月18日発売のアクションコミックスで同誌は通算1000号という大台に乗り、アメコミ史上初の快挙を成し遂げました。
記念すべき1000号では現在のコミックスシーンを引っ張る様々なトップクリエイターたちが一堂に集結し、オムニバス形式で偉大なる歴史的快挙を祝いました。
今年はスーパーマンが1938年に『アクションコミックス #1』にて初登場してから記念すべき80周年の年。
そしてそれと同時に、4月18日発売のアクションコミックスで同誌は通算1000号という大台に乗り、アメコミ史上初の快挙を成し遂げました。
記念すべき1000号では現在のコミックスシーンを引っ張る様々なトップクリエイターたちが一堂に集結し、オムニバス形式で偉大なる歴史的快挙を祝いました。
しかしスーパーマンのニュースはこれだけではありません。
何と今後のスーパーマン誌のライターとして、とんでもない人物がDCにやって来たのです。
その名は「ブライアン・マイケル・ベンディス」マーベルが全く分からない僕でも聞いたことのある、長年マーベルで多くのタイトルを手掛け続けてきたマーベルの顔ともいえる存在です。
そんな彼がまさかの電撃移籍を果たし、ミニシリーズ『マン・オブ・スティール』及び、スーパーマン誌とアクションコミックス誌をダブルで担当することが発表されました。
先述した『アクションコミックス #1000』のラストではこのミニシリーズの予告編が掲載され、「かつてクリプトンを破壊したのは自分だ」と主張する男が登場。
非常に先が気になるシリーズとなりそうです。
先述した『アクションコミックス #1000』のラストではこのミニシリーズの予告編が掲載され、「かつてクリプトンを破壊したのは自分だ」と主張する男が登場。
非常に先が気になるシリーズとなりそうです。
新生ティーン・タイタンズの活躍を描くストーリーでありながら、リランチ前に展開されたグラント・モリソンによるバットマンサーガの要素が数々登場し、精神的続編とも言える、新旧ファン共に注目の作品。
『ティーン・タイタンズ : ダミアン・ノウズ・ベスト』です。
ティーン・タイタンズ:ダミアン・ノウズ・ベスト |
現在大好評刊行中のDCユニバースリバースシリーズ。本作で邦訳刊行作品は17作目になりました。
ティーン・タイタンズ : リバース
ティーン・タイタンズ、それは10代の若者たちによって結成されたヒーローチーム。
かつて活躍したそのチームは、リーダーであったティムの死により事実上解散。
残されたメンバーであるビーストボーイはハリウッドで豪遊生活を送り、友人の死から目を背けようとしていました。
しかしそんな彼に忍び寄る黒い影が…
一方その頃、同じくティーン・タイタンズ所属であったレイブンはニューヨークにて何者かに襲われ気絶。
朦朧とする意識の中彼女の目には小柄な男と巨大な翼竜の姿が…
ここはカリブ海トランド島。人身売買の温床となっているこの島で、警察組織と共に不正に立ち向かおうとする1人の女性の姿が。彼女の名はコリアンダー、またの名をスターファイヤー。惑星タマランの王女である彼女は、かつて異星人ドミネーターたちの手によって隷属させられた辛い過去を持つ人物。自身と同じ境遇にある子供たちを救おうとした彼女でしたが、志半ばで魔の手に倒れてしまいます。
- リバース以前の彼女はレッドフードとアーセナルと共にアウトローズとして活動。その後独立した後本作に至ります。
- 邦訳版も刊行されている『レッドフード&アウトローズ』では、世間知らずで、性交渉によってその星の言語を知ることができるという謎の能力を活かしアーセナルと出会って早々寝てしまうようなかなり変わった女性として描かれていた彼女ですが、今作の彼女はリランチ前のような正義感溢れる女性として描かれており、ナイトウィングことディック・グレイソンとの関係も復活していて、原点回帰しているようです。
時を同じくして、セントラル・シティでは新米ヒーローキッド・フラッシュが活躍。未熟ながら強い使命感で街を駆け巡るウォリー。トンネル内で倒れていた男性に声をかけようとした彼でしたが、男性の正体は人間ではなくロボット。ロボットから放出された催涙ガスによってたちまち気を失ってしまいました。
そして舞台はサンフランシスコ。洞窟内で目を覚ましたビーストボーイの周りには、彼と同じく拘束され身動きの取れなくなったレイブン、スターファイヤー、キッド・フラッシュの姿が。
そして彼等の前には翼竜ゴライアスを連れ、上機嫌で不敵にほほ笑むダミアン・ウェインの姿が…
これまでのティーンタイタンズ
ティーン・タイタンズと言えば、DCコミックスの中ではティーンヒーロー達が集結した、言わば「若きジャスティス・リーグ」のような存在。
ジャスティス・リーグと共に、これまで数々の強敵たちと対峙し、幾度となく世界を救ってきた伝統あるチームです。
また、ティーン・タイタンズと言えばゲームにドラマ、映画にも登場し、邦訳作品にも多数登場しているヴィラン、「デスストローク」の初登場作品としても有名。
DCコミックスを語る時、欠かすことのできないチームの1つと言えるでしょう。
本作はそんなティーン・タイタンズの最新シリーズの初邦訳作品となります。
これまでのティーン・タイタンズの流れを振り返ってみると、リランチ(NEW 52 !) 以降、チームはリランチ前の要素を受け継ぎ、リーダーのティム・ドレイクことレッドロビンを始め、ワンダーガールやスーパーボーイなどのお馴染みのメンバーに、バンカーを始めとしたリランチ後から新たに加わったキャラクターを加えてスタート。
その後、スーパーボーイを含めた一部のメンバーが脱退し、代わりにビーストボーイとレイブン、パワーガール(巨乳の方ではなくターニャ・スピアーズの方)が加わり、新たなメンバーと共に連載は続けられました。
しかしDCユニバースリバース後、ミスター・オズの策略によりティム・ドレイクが死亡。
それに伴いチームも解散してリランチ後から続いたチームの物語は幕を閉じました。
- ちなみに実際にはティムは死んでおらず、ミスター・オズに監禁されていましたが、現在は帰還しています。
新生ティーン・タイタンズ
そして先代チームの解散を受けて刊行されたのがこの新生ティーン・タイタンズ。
そのメンバーは新たなるリーダーとなる、満を持してティーンエイジ(13歳)となったバットマンの息子である、ロビンことダミアン・ウェインを筆頭に、キッド・フラッシュ(ウォリー・ウェスト、一応書いておくと黒人の方のウォリーです)、スターファイヤー(コリアンダー)、そして旧ティーン・タイタンズのメンバーだったビーストボーイ(ガーフィールド・ローガン)とレイブンの計5人。
全体的に見てみると、リーダーはバットマンのサイドキック経験ありという伝統を守りつつ、歴史的な初登場時の初期メンバーであるキッド・フラッシュに加え、マーヴ・ウルフマン&ジョージ・ペレス期から主要メンバーであり、現在でもティーン・タイタンズと言えば誰もが連想するであろうスターファイヤー、ビーストボーイ、レイブンという馴染み深い顔ぶれが並ぶという、「読者が愛したタイタンズの帰還」と言う側面が強いチーム編成になっている印象を受けます。
しかしそうした側面を意識しながらも、リランチ後初めて登場したウォリー・ウェストがチームに加わっている点などからは新たな時代の到来を予感させ、懐かしさと新しさが両立した、ファンはもちろん、新規読者にも親しみの持てるチームになっていると言えるでしょう。
- ペレス期からの3人に関しては『ティーン・タイタンズGO! 』等でも活躍しており、あまりタイタンズを知らない方でもタイタンズと聞くと連想する方が多いのではないのではないでしょうか。
- ちなみに余談ですが、本作の後、チームにはDCユニバース:リバースにてその存在が明らかになったジャクソン・ハイドことアクアラッドが仲間に加わります。このキャラクターはアニメ『ヤング・ジャスティス』にて人気を博し、その後コミックに逆輸入されたキャラクター。歴史的な初期メンバーであるアクアラッドがチームに加わり、かつそれが多くのファンが親しみを持つヤング・ジャスティス版アクアラッドであることで、「読者が愛したタイタンズの帰還」という側面はますます強まったと言えるでしょう。
こちらがそのアクアラッド。
真ん中の黒人青年です。
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ダミアン・ノウズ・ベスト
ダミアンによって強制的に招集されたティーンヒーロー達。状況が理解できない彼等を前に、ダミアンは新生ティーン・タイタンズの結成を宣言。「ここ数年のタイタンズは負け犬や犯罪者の集まりで悪ふざけでしかなかった」と主張するダミアンは、13歳となった今、自身の過去や血筋を抜きにして、1人の人間としてタイタンズを再び若きヒーロー達の見本となる優秀なチームにするべく、彼等を集めたのでした。
しかし実はこのメンバーが集められたのにはもう1つの理由が。
それは13歳の誕生日、彼の祖父より送られたプレゼントに起因していました。小鳥の死骸と共に届いたのは1通の手紙。
「宿命を全うする時が来た。拒絶すればお前は死ぬ」
その送り主とは恐るべき犯罪者集団「リーグ・オブ・アサシンズ」の首領にして、ダミアンの母タリアの父「ラーズ・アル・グール」
世界各地に点在し、細胞を若返らせることのできる生命の泉、ラザラス・ピットを用い、ローマ帝国の滅亡から世界大戦まで、様々な歴史の裏で暗躍してきた不老不死の男である彼は、これまで幾度となくダミアンを自身の後継者にしようとしてきましたが、ダークナイトの手によってその陰謀はこれまで阻止され続けてきました。
そしてダミアンが13歳となった節目の年に、今再び彼に手を伸ばそうとしていたのです。
今回ラーズが遣わしたのはタイタンズと同じく若き暗殺者たちによって構成された暗殺者集団「デーモンズ・フィスト」
ラーズの血を引いていない彼等が一族に迎えられるための方法はただ一つ。最終試験として、自らが選んだ標的を抹殺することでした。
そしてその標的こそ、かつてデーモンズ・フィストを率いていたダミアンその人だったのです。
しかし今回の標的は彼だけではありません。最終試験の標的は綿密な計算と預言によって、自身に欠けた美点を持つ者を、デーモンズ・フィストの各メンバーがそれぞれ選出するシステムです。すなわちダミアン以外にも標的がいることになります。
デーモンズ・フィストの構成員は、ビーストボーイを狙う、彼と同じく変身能力を持った「ブランク」、スターファイヤーを狙う岩人間「ストーン」、キッド・フラッシュを狙う竜巻を操ることのできる「ナイトストーム」、レイブンを狙う、触れたものを腐食させることのできる「プレイグ」、そしてかつてダミアンに右目をを傷つけられ、以来ダミアンへの復讐のためだけに生きてきた、デーモンズ・フィストのリーダーにして片眼の戦士「マーラ」の計5名。
彼等は標的を全員始末すれば、偉大なる悪魔の一族として認められることとなります。事前に母タリアよりフィストの作戦を知られたダミアンは、皆を守るためにタイタンズを結成したのでありました。
こうして事情を説明し、ようやく全員が状況を把握したのも束の間、ダミアンの隠れ家を特定したデーモンズ・フィストたちが早くも彼等に襲いかかります。
突然の攻撃に体制を崩され、一先ず退却するタイタンズ一行。しかしフィスト達もこのまま彼等を逃がすはずがありません。
残された時間はあと24時間。
果たしてタイタンズの一行はそれぞれの絆を深め、デーモンズ・フィスト、そしてラーズの魔の手から逃れることはできるのでしょうか…
悩み多き若者たち
本作の魅力は何と言ってもタイタンズを構成する個性豊かなメンバー達。
リーダーであるダミアンは、世界最高の探偵と悪魔の娘との間に生まれ、その血筋からこれまで数々の苦難に巻き込まれてきた人物。父の意思を継ぎヒーローとしての道を歩もうとしながらも、心のどこかで運命から逃れられず、ラーズのようになってしまうのではないかという恐怖感を抱きながら奮闘し続けています。
これまで犯罪集団の後継者として育てられ、知能も戦闘力も大人に匹敵するダミアンですが、その一方で人と関わるのは極端に苦手。わがままでプライドが高い性格ながら、心の奥では自分の居場所を求め、仲間を大切にする心優しき少年です。
若者らしい悩みを抱いているのは彼だけではありません。
他のメンバーもまた、それぞれの悩みを抱えながら戦っています。
他のメンバーもまた、それぞれの悩みを抱えながら戦っています。
旧メンバーであるビーストボーイは軽口が得意でありながらも、家族がいないという孤独さから人一倍仲間を必要としているキャラクター。盟友ティムの死も重なり、家族を強く欲する彼はリーダーが変わったタイタンズに戸惑いながらも、少しずつチームに溶け込んでいきます。
同じく旧メンバーのレイブンはアザラスに住まう悪魔トライゴンの娘。父親のような残忍な存在になるまいとするその姿は、ダミアンに通ずるものがあると言えるでしょう。
新米ヒーローのキッド・フラッシュはそもそもヒーロー経験が浅く、まだまだ慣れないことばかり。元々トラブルメーカーだった自分を変えたいという思いから、バリーのような一人前のヒーローになるべく努力し続けています。
また、自身の父親ダニエル・ウェストがリバース・フラッシュであったことなども彼の心に大きな影響を与えています。
彼のキッド・フラッシュになるまでのストーリーは既に刊行されている『フラッシュ:ライトニング・ストライクス・トゥワイス』で描かれています。フラッシュ:ライトニング・ストライクス・トゥワイス (ShoPro Books DC UNIVERSE REBIRTH) |
また、当ブログでもウォリーのストーリーや、父ダニエルについて取り上げていますので、良ければこちらもチェックしてみて下さい。
『フラッシュ:邪悪なる閃光』 前編 / 今作に至るまでの経緯について
『フラッシュ:邪悪なる閃光』後編 / 本編の紹介とその後の展開について
チームの中ではお姉さん的存在のスターファイヤーですが、先述したように彼女にもまた辛い過去があります。しかしそうした過去を乗り越えて、皆を引っ張っていくような頼もしい存在になっており、無くてはならない存在です。
このように、今回のタイタンズはそれぞれのメンバーが血筋や環境による悩みを抱きながらも活動しています。それぞれのバックグラウンドを乗り越え、チームとして団結していく彼等の姿に注目です。
モリソンサーガの影響
また、本作のもう一つの見所は随所に現れるグラント・モリソンのバットマンサーガの影響。かつて黒歴史として忘れ去られていたダミアンの復活から始まったモリソンサーガは、これまでの80年近いバットマンの歴史を全て肯定し、それをブルース・ウェインという男の人生の15年間の出来事として描き、バットマンの物語を神話の域にまで発展させました。
その壮大な物語はリランチ前からリランチをまたいで約7年間に渡って展開され、その後のバットマン史に多大なる影響をもたらしました。
そしてその中でも特に大きかったのがダミアンというキャラクターの存在です。
これまでパラレルワールドでしか存在しえなかったバットマンの息子。
その存在はかつて『バットマン:サン・オブ・ザ・デーモン』において初めて登場したものの、多くの物議を醸し、黒歴史として公式側もその後登場させることなく、人々からも忘れ去られていました。
しかしそんなダミアンをモリソンは『バットマン・アンド・サン』で正真正銘の息子として蘇らせたのです。新たな設定を与えられた彼は、リーグ・オブ・アサシンズの後継者として育てられ、悪魔の血を引きながらも、父ブルース・ウェインの正義を貫く姿との間で葛藤し、自らの二重の運命に揺れ動くキャラクターとして描かれ、7年間のサーガを通して少しずつヒーローとしての自覚を持ち始め、暴力的で生意気だった殺人兵器から、ブルース・ウェインの愛する息子へと成長していきました。サーガの最終章である第3部にて、バットマン達は世界の改変を目論むタリア率いる組織「リバイアサン」との戦いに身を投じていくことになります。ダミアンにとってそれは同時に、父と母の戦争でもありました。ここでもダミアンは自身の二重の運命に惑わされることになっていきます。
そしてそんな彼に遂に運命の時が訪れます。『バットマン・インコーポレイテッド:ゴッサムの黄昏』にて、自身のDNAから作られたもう一人のダミアン、「ファーザーレス」との戦いで彼は命を落とします。
そのあまりにも突然の死は、殺人兵器として育てられ、本当の愛を知らなかった少年が、真実の愛に気付き、心の中にある純粋な優しさを開花させた少年の死としてはあまりにも悲惨すぎるものでした。しかしその死は、仲間を含めた多くの人々を救おうとした結果の死であり、正義を追い求めた末の尊い犠牲でした。そして何より、彼は息子として、両親が争うのをやめて欲しかったのです。彼はどちらの勝利も望まず、どちらの死も望んではいませんでした。彼は純粋に、2人のことを愛していたのです。自らの運命に苦しみながらも、勝利ではなく和平を求めたダミアン。
その姿は間違いなく“バットマンの息子”だったのです。
このサーガについては遥か昔、僕がまだ公認ブロガーになるなどとは夢にも思っていなかった頃にざっくりとした紹介記事として取り上げたことがありますので、宜しければこちらもどうぞ→「グラント・モリソンによるバットマンサーガ」全11冊一挙紹介
- 我が子の死にブルースがもがき苦しんだことは言うまでもありません。彼はこの後、力と引き換えに自らの身を蝕むアズラエルの“悲哀の鎧”を身に纏い、軍事用バットロボット1000体を引き連れ、リバイアサンとの最終決戦に臨むことになります。
- 今回ご紹介している『ティーン・タイタンズ』にダミアンが登場している時点で書かなくてもお分かりかと思いますが、ダミアンはこの後、『Robin Rises』というエピソードにて復活を遂げます。そもそもサーガの最終話ではダミアンの棺が盗まれたことが明かされており、作者モリソン自身も後に復活することを視野に入れていたのかもしれません。
これらの歴史を踏まえてみると、本作がいかにモリソンサーガに影響され、それを土台にしてきたかが見えてきます。
ダミアンが自らの血統とその運命に葛藤しながらも正義と仲間のために戦うというコンセプトがモリソンサーガで語られてきたことの延長線上にあるということはここまでの紹介でもお分かりいただけたことと思います。
しかし本作がモリソンサーガから大きな影響を受けているのはそこだけではありません。
そもそも今回のダミアンを後継者とすべくラーズが暗殺者を送り込むというストーリーはモリソンサーガの連載中に行われたイベントであり、邦訳もされている『バットマン:ラーズ・アル・グールの復活』でも既に展開されています。このイベントでは、老いたラーズが自らの魂を転生させる肉体としてダミアンを利用しようとします。
このイベントは複数の雑誌にまたがったストーリーになっているため、全ての号をモリソンが担当しているわけではありませんが、ダミアンの血統というテーマを大きく扱った作品となっており、モリソンサーガがあってこそ描かれたストーリーと言えるでしょう。
そう考える根拠となっているのは、話の内容に加えて、ある人物の存在が関係しています。
このイベントではラーズの息子でありながら、後継者として認められなかった「ホワイトゴースト」という男が登場します。本名をデュシャンというこの男は非常に忠誠心が強い人物であり、ラーズのためならば、ありとあらゆることを進んで引き受ける忠実な僕として描かれています。実際、このイベントの終盤でホワイトゴーストは弱ったラーズのために自ら肉体をラーズの魂の新たな宿り先として明け渡し、その一生を終えています。
このイベントではラーズの息子でありながら、後継者として認められなかった「ホワイトゴースト」という男が登場します。本名をデュシャンというこの男は非常に忠誠心が強い人物であり、ラーズのためならば、ありとあらゆることを進んで引き受ける忠実な僕として描かれています。実際、このイベントの終盤でホワイトゴーストは弱ったラーズのために自ら肉体をラーズの魂の新たな宿り先として明け渡し、その一生を終えています。
そして非常に興味深いことに、本作『ティーン・タイタンズ』に登場する先述したデーモンズ・フィストのリーダー「マーラ」はなんとホワイトゴーストの娘なのです!
これは作中でもラーズとマーラ自身の口から語られています。ホワイトゴーストがタリアなどと同じくラーズの子供であったにもかかわらず、後継者として認められなかったことを踏まえてみると、ダミアンを狙うマーラというキャラクターが作中で語られる以上に因縁深く、かつ魅力的なキャラクターに見えてきます。
これは作中でもラーズとマーラ自身の口から語られています。ホワイトゴーストがタリアなどと同じくラーズの子供であったにもかかわらず、後継者として認められなかったことを踏まえてみると、ダミアンを狙うマーラというキャラクターが作中で語られる以上に因縁深く、かつ魅力的なキャラクターに見えてきます。
後継者として認められるため、ホワイトゴーストの血を引くマーラがダミアンと闘う。
本作が『ラーズ・アル・グールの復活』にインスパイアされた作品であることは明らかなように思えます。むしろ「ラーズ・アル・グールの復活の続編である」といっても過言ではないのではないでしょうか。
このように、本作はグラント・モリソンが作り上げたダミアンというキャラクター、そしてそのアイデンティティを忠実にリスペクトした作品であると言えます。こうした点に着目しながら読んでみると、また違った発見があるかもしれません。
- 作中におけるモリソンサーガへのリスペクトはこれだけではありません。例えば劇中でダミアンが操縦しているタイタンズ・ジェットはダミアン曰く「バットマンから盗んで改良した」と語られていますが、このジェットのデザインは『バットマン&ロビン』にて登場する次世代バットモービルに非常によく似ています。恐らくダミアンはこれを改良したのでしょう。こういった小ネタもファンには嬉しいですね。
- また、本作の巻末にはバリアントカバーギャラリーも収録されています。本作の#1~#5までのバリアントカバーを手掛けたのはアーティストのクリス・バーナム。モリソンサーガ第3部となる『バットマン インコーポレイテッド』シリーズを手掛け、その後もグラント・モリソンと『Nameless』等を手掛けているアーティストです。久々に彼の描くダミアンが見れたのはとても嬉しかったですね。ファンは要チェックです!
バーナムさんのアートはこんな感じ。
フランク・クワイトリーに似てるかな?
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リバース後の新シリーズということで、新規読者にも入りやすい内容になっていながら、これまでの読者、特にダミアンファンには必見の要素が盛り沢山。新旧読者どちらも楽しめる作品になっていると言えるでしょう。
ちなみに現在DCにはもう1つタイタンズという名を冠したチーム『タイタンズ』が存在。こちらはティムが率いていたティーン・タイタンズより前に存在していたディック・グレイソン率いるティーン・タイタンズが再集結したチーム。
リバースの謎に迫るストーリー等が展開されていたこともあるため注目度はこちらの方が高く、今回ご紹介したタイタンズはあまり話題になっていない印象ですが、十分楽しめる作品になっていますので、気になる方は読んでおくとコアなファンを名乗れるかもしれませんよ (笑)
それではまた、次回の投稿でお会いしましょう。
TITANS GO!!
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