「ゴッサム・アカデミー イヤーブック」&ゴッサム・アカデミーシリーズ一挙紹介!


Merry Christmas!!

12月もすっかり終盤に入り、1年の終わりが着々と近づいて参りました。学生さんの中には1年の終わりということで忙しかった学校生活から解放され、羽を休めている方も多いのではないでしょうか。

そんな皆様方に今回ご紹介するのが『ゴッサム・アカデミー:イヤーブック』です。


イヤーブックとは、アメリカの学校における独自の文化で、1年間の学校生活の出来事などをまとめた日本で言う卒業アルバムのようなもの。日本のものとは違い全校生徒向けに作成され、誰でも購入することができるそうです。

今作はゴッサム・アカデミーで学生生活を送る「探偵クラブ」のメンバー達が独自に作成したイヤーブックを基に2年近くに渡り連載されてきた当シリーズを締めくくるものとなっています。


ゴッサム・アカデミーとは?


ゴッサム・アカデミーシリーズはバットマンが活動するゴッサムシティにある学園「ゴッサム・アカデミー」を舞台にした学園ものコミックとして、2014年10月から2016年8月にかけて刊行された作品です。

ちなみに今回主にご紹介することになる3巻「イヤーブック」の最後に収録されている「Gotham Academy Annual #1」は一応このシリーズの作品ということになっているのですが、1つ前の#18から約3ヶ月の間を経て発売されており、公式サイトの作品紹介でも続編「ゴッサム・アカデミー セカンドセメスター」の先駆けとして紹介されているため、内容的には「イヤーブック」とは独立した内容となっています。

それではここでこれまでのシリーズで起きた出来事を振り返ってみることにしましょう。



第1巻 「ゴッサム・アカデミー



記念すべき第1巻である本作は#1~#6をまとめたものになっており、続編のセカンドセメスターも含めた約3年間に渡る物語の序章となっています。

舞台となるのはゴッサムシティにあるゴッサム・アカデミー。かつてこの街の富豪、ブルース・ウェインも在学していた名門校です(といってもブルースは退学させられているのですが 笑)
この学園に通う2年生のオリーブ・シルバーロック(上の画像の白髪の少女がそうです)は去年の夏に起きたある出来事が原因で心を閉ざしていました。そんな中、オリーブは新入生のミア・ミゾグチ(上の画像のオリーブの下の少女です)の世話係を務めることになります。偶然にも、ミアの兄カイルは同じく学園に通うテニス部員で、オリーブと交際中なのでした。
好奇心旺盛なミアの相手をすることになってしまい、新学期早々憂鬱なオリーブ。一方学園では北校舎に出没する幽霊の噂が広まっていました。オリーブはいたずら好きのサングラス少年コルトン・リベラ、オカルト好きの同級生ポメリーン・フリッチ、ラングストームウイルス(科学者カーク・ラングストロームをバットマンのヴィランの1人蝙蝠人間マンバットに変えたウイルスです)に感染した蝙蝠少年トリスタン・グレイ達と共にこの奇妙な騒動に巻き込まれていくことになりますそしてそれはオリーブの秘められた過去に関係していたのです…

第2巻「ゴッサム・アカデミー:カラミティ



前作のラストでゴッサム・アカデミーがアーカム・アサイラムと繋がっていたこと、オリーブの母シビルがバットマンによってアーカムに投獄されており、そのシビルとオリーブにはどちらにも何らかの特殊能力が備わっていたことが明かされ、今は亡き母への想いを強めるオリーブ。第2巻ではこれまで通り学園で起こるドタバタ騒ぎを通して、オリーブと母シビルの持つ能力の正体や、彼女の家系に隠された秘密が徐々に明らかになっていきます。バットマンの息子であるダミアン・ウェインが学園に入学してきたり、バットマンの宿敵(最近ではバットマンファミリーの仲間となっている)クレイフェイスの娘キャサリンや、「バットマン:アイ・アム・ゴッサム にも登場したヒューゴ・ストレンジなどの新たなキャラクター達も登場し、シリーズの世界観はますます広がっていくのでした。


※アイ・アム・ゴッサムについては当ブログでも以前取り上げていますので宜しければこちらもどうぞ→アイ・アム・ゴッサム レビュー


このシリーズ最大の特徴はバットマンのホームタウンであるゴッサムを舞台にしていながら、ヒーロー達ではなく学園生活を送る子供たちを主人公にしていること。有名なキャラクター達も物語に関係はしてくるものの、あくまでサブキャラクターにすぎず、基本はオリーブ達「探偵クラブ」のメンバー達を主人公として物語が進んでいきます。彼女達はこのシリーズで初登場したキャラクター達ですので、バットマンやDCコミックスに馴染みのない方々でも余計な背景知識などを気にすることなく楽しめます。

ストーリーも読みごたえは十分。荘厳な雰囲気の漂う学園に秘められた秘密。そして主人公オリーブの血筋に隠された恐るべき過去が個性豊かなメンバー達の冒険と共に徐々に明らかになっていきます。そしてもちろん、バットマンも登場…?
ページを捲れば少年時代に戻ったかのような感覚を味わえることでしょう。

しかしそれでいてコアなファンへのサービスも怠らないのがこのシリーズの凄い所。学園の個性豊かな教師陣はいずれも1966年のバットマンのドラマシリーズやバットマン・ジ・アニメイテッドシリーズなどのこれまでのバットマンシリーズに関連するヴィランやキャラクター達をリメイクして描かれており、ファンなら思わずニヤニヤしてしまうような仕掛けも満載。


バットマンシリーズへのリスペクトに満ちながらも、学園ものとしての面白さもしっかりと兼ね備えているのがこのゴッサム・アカデミーなのです。


3巻 イヤーブック



さて、ここまで紹介してきたゴッサム・アカデミーシリーズ。先程も書いたようにシリーズの軸となるのは主人公オリーブ・シルバーロックの家系に隠された秘密と学園とアーカム・アサイラムを結ぶ秘められた過去にまつわるストーリーなのですが、3巻のイヤーブックではそうした物語からの本筋からは少し離れ、オリーブ達の日々の学生生活に焦点を当てた作品となっています。ですので、これまでに本シリーズに触れたことが無い人であっても、この1冊だけで十分楽しめる内容となっています。

本作の特徴は何と言ってもその豪華な作家人の数々。今回のイヤーブックではオリーブ達の毎日がオムニバス形式で描かれているため、通常連載時には携わっていない作家陣が数多く参加しています。

例えばバットマン:リル・ゴッサム」でお馴染みのダスティン・グェンや、「バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街」等でアートを担当しているラファエル・アルバカーキ。「マウスガード」のデイビッド・ピーターセンや「I KILL GIANTS」のケン・ニイムラなど、日本でも邦訳作品が出版されている作品のクリエイター達が多数集結しています。
名クリエイター達が織りなす個性豊かなキャンパスライフの数々。きっとお気に入りのエピソードが見つかるはずです

ちなみに僕が好きなのは現在DCで「スーパーガール」や「ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカ」等を手掛けているスティーブ・オーランド―が手掛けている「尊い金属」というエピソードですね。このエピソードで初登場する技術のシルバー・スミス先生がお気に入りです。その名の通り何でも銀メッキ加工してしまう銀に執着したキャラクターなのですが、いかにもバットマンのヴィランとして登場しそうな設定が、初登場にもかかわらずゴッサムらしさを感じさせる流石のライティングだと感じました。

そして最後に収録されているイヤーブックからは独立した作品「壊れた心臓」では、大人気アニメシリーズ「バットマン・ビヨンド」(邦題『バットマン・ザ・フューチャー』)のキャラクターと、70年代のバットマンシリーズに登場したマイナーなキャラクターを掛け合わせ、クラシックでありながら未来的な不思議な物語が描かれています。作者ブレンデン・フレッチャーとベッキー・クルーナンのこれまでのバットマンへのリスペクトが深く感じられる作品、こちらも必読です。




そしてセカンドセメスターへ…


さて、このイヤーブックにてゴッサム・アカデミーシリーズは幕を閉じます。

しかし物語はこれで終わったわけではありません。

スピンオフ作品では企業間クロスオーバータイトルとして、BOOM !スタジオで連載されている同じ学園ものコミック「LUMBERJANES」とコラボした「Lumberjanes/Gotham Academy」が2016年6月から11月にかけて、全6話のミニシリーズとして刊行されています。


また、今回ご紹介した3冊の邦訳コミックには収録されていないエピソードとして、バットマン誌上で2014年10月~2015年4月に行われたイベント「エンドゲーム」のクロスオーバーとして、「GOTHAM ACADEMY : ENDGAME #1」も刊行されました。こちらは邦訳版バットマン:エンドゲームに収録されていますので、気になる方はこちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。




そして幾多の困難を乗り越えたオリーブ達ゴッサム・アカデミーの学生たちの物語は、2016年9月~2017年8月にかけて刊行された続編「ゴッサム・アカデミー セカンドセメスター」に続いていきます。

2巻で明かされたオリーブの家系シルバーロック家に長年に渡り取り憑いてきた悪霊「カラミティ」の存在や、学園とアーカムを繋ぐ忌まわしき事件など、前シリーズで明かされることのなかった真実が遂に読者とオリーブに明かされることになるのですが、イヤーブックの楽しい雰囲気とは裏腹に、まるでそれが嵐の前の静けさであったかのようにストーリーはこれまで以上に重く、衝撃的な展開を迎えていくことになります。

今回このイヤーブックを取り上げるにあたり、私SATDANも全12話を単行本を購入して読み切りました。
これまでのシリーズの集大成という感じで、途中の衝撃展開には度肝を抜かれることの連続でしたが、3年間に渡ったシリーズの最後である(今のところは…?)ラストシーンでは感慨深いものがありました

最後にこのセカンドセメスターのストーリーを少しご紹介してこの記事を締めくくることにしましょう


物語は冬休みから始まります。帰る家の無いオリーブは人のいなくなったキャンパスの中で1人寂しく過ごしていました。そんなある日、彼女の部屋に新しいルームメイトとして、転校生のアミーがやってきます。彼女はこれまでのキャラクター達とは違い完全な非行少女で、性格も言動も乱暴で意地悪。自分とは正反対の彼女に戸惑うオリーブでしたが、そんなアミーの存在が彼女を徐々に変えていくことになります。

そして冬休みが終わりゴッサム・アカデミーは新学期を迎えます。ところが始まって早々国語教師のエリス・ピオが突如失踪。さらに学園内では謎の「魔女クラブ」が活動を始めます。騒動に巻き込まれた探偵クラブのメンバーは何とかこの謎を解決しようとするのですが、その過程で仲間のコルトンが退学処分になってしまう事態が発生、事態は急展開を迎えていきます。そして1巻の終盤で衝撃の展開と驚くべき事実の数々が明かされ、事態は最悪の結末へ。そしてクライマックスである2巻では舞台を学園の外に移し、お馴染みのバットマンヴィランを始め、かつてヴィランとして登場した「テリブル・トリオ」がリメイクされて登場。これまでのゴッサム・アカデミーシリーズに登場したキャラクター全員が総出演しながら長きに渡ったシリーズはついに大団円を迎えていくことになります。

※このセカンドセメスターについては当ブログで別記事として詳しく感想を綴る予定ですので、楽しみにしていてください!

(ちなみにリメイク前のテリブル・トリオはバットマン:キリングジョーク 完全版に収録されている短編「善良な市民」に登場していますので、こちらも気になる方はチェックしてみて下さい)


基本的に始まったら終わることのないアメリカンコミックスのユニバースものにおいて、僕にとってこのシリーズは初めて綺麗に完結したシリーズとなりました。DCリバースの流れに組まれることなく、最後まで独立したシリーズとして締めくくられた本作でありますが、このシリーズは間違いなく今後のバットマン史、そしてDCコミックス史で語り継がれていくであろう作品になったと思います。この機会に皆さんも是非、ちょっと変わったゴッサム・アカデミーの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

というわけで今回は「ゴッサム・アカデミー:イヤーブック」をお届けいたしました。


またお会いしましょう!

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